利用可能性ヒューリスティック (availability heuristic)

Written by KFS on . Posted in リサーチと行動経済学

脳は節約志向
行動を生む思考のショートカット

目次

利用可能性ヒューリスティックとは?

「利用可能性ヒューリスティック」とは、「取り出しやすい」記憶情報を、優先的に頼って判断してしまうこと。
記憶に残っているものほど、頻度や確立を高く見積もる傾向。
探せる記憶だけが事実になること。
自分の記憶から簡単に呼び出すことができる情報により、バイアスがかかってしまうこと。

簡単に言えば、

  • 仕事帰りに、スーパーで、5分で今日の夕食の買い物の準備をしないといけない主婦が、買い物かごに「いつもの」を放り込む際の心理

と言えばわかりやすいでしょうか?

仕事帰りに、買い物時間が5分しかない場合、あれこれ、店頭で迷っている暇はありません。

「あ–、マヨネーズが切れてた」
「あ、そうだ。朝食用のバターが切れそうだったんだ!」と思い出した際、パッと見て、商品棚から手っ取り早く「いつもの」を買い物かごの中に放り込んだり、パッケージを一目見ただけで、3秒で「あ、これだ!」と判断して、買い物かごに放り込んでいきます。

このような行動を取る際、人はどこまで考えて行動しているのでしょうか? 何を基準に、商品を選んでいるのでしょうか?

その際に影響を与えているのが、「利用可能性ヒューリステック」です。

結局、脳にとって「考えること」は大きな負担。視覚情報やら、聴覚情報やら、脳が処理することは多すぎる—-。

だから、脳は、「最短で最も効果が高い(と思われる)ものに行きつく方法」を、過去の経験や、今までの記憶から呼び出し、その情報を優先的に頼って判断する、といった思考のショートカットを行います。

その結果、素早い判断ができるのですが、その判断には、得てして、一定の偏り(バイアス、思い込み)が含まれます。

この利用可能性ヒューリスティックを形成する要因としては、主に、以下の3つのポイントが影響します。

1.想起容易性:

記憶時のインパクトが大きい情報(高頻度、鮮明、物語性など)
~よく見かけるCM、話題性、CMに有名タレントを使う理由、など

2.検索容易性:

記憶の中から優先されて探される情報
~とりあえず、「いつもの」を買えば、間違いがないと判断する心理

3.具体性:

身近な人間から直接聞く、具体的な話により、少数の法則を犯している可能性があるにも関わらず、情報の優先度が変わること。
(口コミサイトや、ブログでの情報、フェイスブックなどの内輪の情報など)
~あの人が言うなら間違いない、など

「1.想起容易性」「2.検索容易性」「3.具体性」は、それぞれが相互に関連あるものですが、「3.具体性」において、SNSが重要なのも、「知っている人」や「自分の周りの人」の話は、社会性ある集団として進歩してきたヒトにとって、知人などの自分にとって生きていく環境の回りのヒトの情報は、
情報としての重要度が高く(狩猟採集してきた際の名残)、
その分、記憶に残りやすい=「想起容易性」や「検索容易性」が働きやすくなることが影響していると言えるでしょう
(たぶん?このあたりの話はあまり根拠はありません。私の推論です)。

マーケティングリサーチと利用可能性ヒューリスティック

調査を行う際にも、調査結果から新たな施策を考える際にも、顧客の心理の底にある「利用可能性ヒューリスティック」について考えることは、とても重要なことだと思います。

KFSが、「インサイトリサーチ」と呼ばれる定性手法を重要だと考えているのは、定量調査だけでは、なかなか、ヒューリスティックバイアスを踏まえたユーザー心理が浮かび上がってこないから。

例えば、上記の例で、定量調査で【○○のマヨネーズを選ぶ理由】をお選びください。」と聞いたら、「味」とか、「カロリーが低いから」といった、説明しやすい、聴くと「あ~、それもっともね。その通りだと思う」というのが上位に挙がることが多々あります。

でも、これは、半分真実であり、半分、真実に届いていないと考えます。

定量調査の結果だけで、生活者の商品に求めることの1位は「味」だから、とか、「健康に良さそう」だからとか、「価格だから」とか、一生懸命工夫しても、”いつものブランド”になかなか勝てない、ということはよくあること。

なぜなら、ニーズには、顕在化しているニーズと潜在化しているニーズがあり、潜在化しているニーズのほとんどは、意識されず、何(どんなニーズ)がその行動を引き起こしたかは、実際のところ、答える側も自覚していない場合が多いからです。

意識されていないから、「潜在ニーズ」なのであり、消費者自身は、ウソをついているわけでもありません。

消費者自身は、自分が何かを選ぶ際の「潜在ニーズ」や、「深層心理」を知らないし、知らなくても生活し、生きていく上では全くもって困らない—。

「いちいち、考えてられない、もっと考えるべきことは他にある」というのが、おそらく、生活者の言い分でしょう。

単に気づいていないというより、わざわざ気に留める必要がないというのが、本当の所ではないでしょうか?

だからこそ、リサーチは、ユーザーがどこに価値を置いているのか、 行動の裏には、どのような心理が働いているのか、言葉にできることの心理を探っていくことはもちろん、「言葉だけではない心理」を考えていくことが重要ではないかと思います。

顕在化しているニーズは、顕在化しているので、言葉で話せる。よって、定量調査でも行うことができます。

一方、潜在化しているニーズは、聴き方によって、潜在意識を刺激し、引き出すことができる領域や、本人も無自覚で、言葉として聞き出すことは困難であり、行動・事実をもとに分析するものとに分かれます。

これらの行動心理を理解し、調査手法を組み合わせて、生活者の心理に理解を深めていくことこそ、大切ではないかと思います。

まとめ:リサーチと利用可能性ヒューリスティックの関係

利用可能性ヒューリスティックスとは、

  • 最短で最も効果が高い(と思われる)ものに行きつくための脳のショートカットであり、
  • 得てして、「いつもと同じ」に落ち着いたり、咄嗟に「なぜそれを選んだの?」と聞かれると答えにくい行動
  • その判断には、必ずしも合理的な判断基準が働くわけではなく、一種のバイアス(偏り)がある

重要なのは、この”偏り”が、商品を選んだり、ブランドに親近感を感じるとか、感じないとか、好き&嫌い、感情を呼び起こす要因になリ得るということ。
だからこそ、リサーチでは、言葉にしやすい顕在領域だけでなく、行動の裏には、どのような生活者心理が働いているのか、潜在領域を含めて明らかにすることがとても重要ではないかと考えます。

関連情報

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興味のある方は、こちらよりご覧ください。
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