【第4回】みんなって誰?-代表性(調査対象者の選定)

Written by KFS on . Posted in リサーチとロジカル&ラテラルシンキング

調査の信頼性向上に向けて

調査対象者における「代表性」とロジカルシンキング
-調査対象者の選び方についてロジカルに考える-

 

調査全体のアウトフレームから、個別調査に落とし込む際には、調査目的に沿って

  • 調査対象と対象者の抽出条件
  • サンプルサイズ

を決めていかなければなりませんが、今回はこのお話です。


子供(のり君):○○買って―――!

ママ:ダメ!

のり君:なんで、みんな持ってるよ、買って―――!

ママ:みんなって誰よ?

のり君:たくちゃんとまさやくんでしょ、それから、けいちゃんも!

ママ:後は?

のり君:あとね—、

ママ:あとは誰、他には???

のり君:え-っと!

ママ:3人だけじゃん。絶対ダメー!!


 

子供のころ、親にこう言われた記憶はありませんか?
なぜ、のり君は、ママを説得できないのか?

ロジカルシンキングでちょっと考えて見ると、

この「みんな持ってる、みんな言ってる」に説得力を持たせる筋道こそ、調査対象者の設定とサンプルサイズの問題を考える際の1番わかりやすい考え方です。

もし、この子供(のり君)が桜小学校の1年A組に通う男の子と仮に設定し、考えてみます。

「みんな持ってる、みんな言ってる」-ママを説得するためには?
(調査対象選定の際の注意点)

1. 調査対象者の設定=調査対象の定義の問題

まず、ママがひっかかるのは、「みんな」って誰ということ。

ちょっと理屈っぽいけれど、対象者の選定の際には、これが大事。

ここで言う「みんな」とは、
=全国の小学生のことを指すのか?
=桜小学校の生徒全員のことなのか?
=桜小学校の1年A組全員のことなのか?
=のり君の友達全員のことなのか?

などなど、定義によって「みんな」の意味が大きく変わってくるのは明らかです。
全国の小学生で今、流行っているから欲しいか、のりくんの友達全員が持っていて、のり君だけ持っていないと一緒に遊べないから欲しいのか? ママを説得させるためには、まずここからです。

2. 調査対象者の抽出方法=調査対象者の代表性の問題

「代表性」とは、その対象者が調査をしたい属性と大きな誤差なく「属性として定義された“みんな”を代表している存在であるか?」といったこと。
もし、のり君が上記1.「調査対象者の設定=調査対象の定義の問題」をクリアして、「桜小学校の小学生のみんな=ほとんど全員(600名)が持っている」から欲しい、とママにお願いしたとしましょう。なぜなら、「たくちゃん」と「まさやくん」と「けいちゃん」が持っているのがその証拠だから、といったロジック展開です。
そこで、問題になるのは、「たくちゃん」と「まさやくん」と「けいちゃん」が、「桜小学校の小学生(600名)」の代表的な存在か?ということです。

もしかしたら、「たくちゃん」は、お金持ちのお坊ちゃまかもしれないし、「まさやくん」は、お父さんがその会社に勤めていて家でテスト用に持っているからもしれない・・・・。
そこに疑いの余地があると、信頼できるデータとは言えません。
偏りのないデータ、それが「代表性」の問題です

3. サンプルサイズの設定=定量的な裏づけがある、データの信頼性の問題

もし、名前を挙げたお友達3人が「「桜小学校の小学生」であり、その3人が持っていたとしても、ママを説得するには至りません。
その3人が持っている=所有率100%からといって、「桜小学校の小学生」の100%が持っている証拠にならない、つまり、その皆が持っているという意見に定量的な裏づけがないからです。

まとめ:結局、「代表性・信頼性」を簡単に言えば?

なんとなく、「代表性や信頼性の問題」なんていうと難しそうですが、「特殊な人かもしれない、たった3人の意見でみんなって言うな!」が基本です。


なんだ、簡単じゃん! その通りです。ただし、簡単そうだからこそ、曖昧なまま調査を進めると、ちょっとマズイことに。

そして、実査終了後に「このデータって、信頼していいの?」と疑問を持たれる調査になってしまう場合があります。

基本的にプロのリサーチャーは、まず最初に調査データを目にする際に、この調査対象者の定義と、調査対象者の抽出条件、サンプルサイズをチェックします。ここをチェックすることで、どの程度、このデータが信頼できるのかどうかをまず頭に入れてから、調査結果を見るのです。
新聞や、テレビ番組などで、「回答者の80%がYESと回答しました」、などと言っている場合、よく、この点に注意してください。5人に4人がYesと回答しても、80%は80%です。人間は、数字で説明されると、「なんとな~く、説得力」を感じてしまうものです。

逆に言えば、気づかずともこうした調査をしていると、簡単に会議の場で、背後から刺されるかも・・・?
実際のマーケティング・マネジメントに用いる数字は、もっとロジカルに考えていきましょう。

 

「調査対象者の定義」は、前述の調査全体のアウトフレーム(調査プラン全体マップ)から個別調査に落とし込む段階で、クリアにすべき問題ですので今回は、調査対象者における「代表性」の考え方の問題と「サンプルサイズの問題」について、もう少し詳しく見て行きます。

 

始めに「代表性」の問題について、説明します。

調査対象者における「代表性」とロジカルシンキング

「代表性」とは、簡単に言えば、

特定の調査方法で抽出した対象者が、調査対象となる人全体(=母集団)の縮図としての集団である

ということ。

 

つまり、
地域や性別、年齢、職業、ブランドなどなど、様々な偏りがなく、母集団全体を反映する結果であることを指します。

 

 

例えば、調査目的が

「エイジングケア商品が今後の有望市場となりえると考えており、この市場向けの商品開発を行いたい。そのため、年齢50歳以上の女性の基礎化粧品の使用実態を知りたい(日本)」場合、

日本全国の年齢50歳以上の女性すべてに調査を出来れば、これほど正しいデータはありません。

これを「全数調査」といいます。

 

しかしながら、マーケティング調査で、全数調査が実現できることは、まずありません。

 

 

ですから調査対象とする母集団すべてに全数調査するのと同様になるように、どこまで調査対象とする集団を近づけることができるか?」を考えるのが、「調査対象者の代表性」という考え方です。

 

例えば、上記の「日本市場の年齢50歳以上の女性の基礎化粧品の使用実態を知りたい」といった場合に、回答者が専業主婦ばかりでは、専業主婦の意見しか聞けたことになりません。仕事を持っている女性とそうでない女性では違うかもしれませんし、都会と地方で異なるかもしれません。

 

もし、これが、米国市場のように、国土も広く、人種も多様化している国であったらどうでしょうか?

 

同じ年齢・50歳以上の女性であっても、ホワイトアングロサクソン系だけでなく、アジア系、ヒスパニック系、アフリカ系、ネイティブアメリカンなど、様々な人種バックグラウンドが異なれば、当然ながらニーズは異なるはずなのに、一定の人種に偏ってしまうと結果は大きく異なります。

 

流氷が流れ着く極寒のアラスカと、海が近いマイアミとでは、当然、化粧品に求める質感も全く異なるはずでしょう。

 

人種やエリアの違いを超えて、誰にとっても普遍的な、共通するニーズはあるはずですが、それが「普遍的なニーズ」だと言えるのは、「代表性」のあるデータに立脚していなければ話になりません。

 

一部の偏ったデータで、「米国市場における基礎化粧品の利用実態は●●であるから、当社としては今後××を強化すべきである」などと結論を出したら、非常に危険、大きな判断ミスに繋がる可能性が高いです。

 

これらの偏りをなくし、データとしての信頼性を高める上で不可欠なのが、「代表性」の考え方です。

 

代表性のあるデータを抽出するためには、無作為抽出法で標本からランダムに行うやり方や、調査設計の段階で、代表性を確保するために、始めから対象者の定義に応じて、サンプル数を割付けていくやり方など、様々な方法があります。

 

ただ、どこまで「代表性ある信頼できるデータ」を求めるのかは、どこまでデータとしての誤差が認められるのか、といった判断の問題です。

テクニック論だけを追及していても、あまり意味はありません。そしてこの「誤差の承認・信頼性の保障の確保」は、サンプルサイズの設定に、大きく関わってきます

まとめ:調査対象選定における「代表性」の考え方とは?

調査対象者を考える際には、まず母集団の定義が大事。

「調査対象者の代表性」という考え方は、調査対象とする母集団のすべてに全数調査するのとできるだけ同様になるように、「どこまで調査対象とする集団を近づけることができるか?」を考えることです。

リサーチ用語では、ある母集団に対して、同じ条件で実施すれば、誰が行っても、また、答える人が同じ調査母集団の別の人であっても、同じ傾向の結果が得られることを、「代表性がある」と言います。

ただ、前述したように、マーケティング調査は、あくまでも、目的を達成するための手段です。正確さを求めるあまり、調査のための調査に陥っていては、それはそれで問題です。
つまり、どこまで「代表性ある信頼できるデータ」を求めるのかは、どこまでデータとしての誤差を認めるのか、といった判断の問題です。

そしてこの「誤差の承認・信頼性の保障の確保」は、サンプルサイズの設定に、関わってきます。

リサーチとロジカル&ラテラルシンキング・コンテンツ

はじめに:リサーチと思考法
【第1回】So What?/Why So?(調査目的の明確化)
【第2回】調査設計とロジカルシンキング
【第3回】Fact&Stick:定量調査と定性を組み合わせた ハイブリット調査の薦め(調査手法)
【第4回】みんなって誰?-代表性(調査対象者の選定)
【第5回】定量的な裏づけ-標本数:サンプルサイズ(標本数)の考え方について

関連情報

KFSの調査設計に対する基本的な考え方はこちら

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KFS

マーケティングリサーチ・調査ソリューションの専門会社、株式会社KFS(ケイ・エフ・エス)。 創造性は顧客を深く知ることから始まる。 インサイト理解のためのインタビュー調査、定量調査と定性調査を組み合わせた統合型ハイブリット調査まで。コンセプト創出~受容度検証、価値創造ソリューション