コントラスト効果

Written by KFS on . Posted in リサーチと行動経済学

始めか、後か、それが問題だ
マーケティングリサーチとコントラスト効果

目次

コントラスト効果とは

人が認識をする際に用いるルールの1つで、2番目のものが最初のものとかなり違うと、実際よりももっとその差を大きく考える傾向がある、ということ
(出典:「影響力の正体」ロバート・B・チャルディーニ 著

 

氷で冷やした冷たい手で触る常温の水は、水だとわかっていても、なんだかとても暖かく感じます。

一方、サウナの後の水風呂の冷たさ。

これと同じように、何かを認識する際に、人はその前後の比較によって、物事を判断する傾向にあり、先立つ条件次第で同じものも違って見えてくることを指す用語です。

 

個人的には、同じチャルディーニの本の中の説明にある「スーツを先に売れ理論」と言われる方がわかりやすい感じがします・・・。

簡単に言えば、ある男性が、「三つ揃えとセーターが欲しいんだが」と店に入ってきた場合、もしあなたがその店の店員だったら、「まずは、スーツを先に売れ」という話です。

なぜなら、コントラスト効果のもとでは、「495ドルのスーツを買ったあとなら、95ドルのセーターも高くは思わない」から。

売上を1円でも多くしたいのなら、「スーツを先に売れ」が正解です。

 

個人的な例では、0の数をいつも間違えてしまうケリーバックを目の保養で見た後は、なぜか、同じエルメスの数万円の革のチョーカーや、スカーフが、思わず、「あ、安い、買える!」と思ってしまう心理ですかね・・・。

ブランドものに全く興味のない私の相棒から見れば、エルメスの革のチョーカーも「何それ、革ひも?犬の首輪?」になってしまいますが・・・。

スーツの後のセーターのような価格の「コントラスト効果」に合わせて、このように、

最初に見せられた情報が「アンカー(錨)」となって、何かを判断する上での基準となり、

知らず知らずに、その情報をもとに物事を判断、行動に影響を与えることを、「アンカリング」

と呼びます。

行動経済学の分野では、Anchoring Effectと呼ばれています。

認知バイアスの一種であり、判断する際に特定の特徴や情報の断片をあまりにも重視する傾向を意味する。
係留または英: Focalism(焦点化)とも。ウィキペディア「アンカリング」より

 

100円ショップだとなぜか高く感じる300円の小物、

ウィンドウショッピングの後は、なぜか、大人買いをしてしまうデパ地下のパン屋さん、

冷静に考えれば、いつもより1つ30円しか違わないけれど、なぜだかとても得した気分になる近所のスーパーの水曜日のセールのアボガド、などなど・・・。

 これらの日々の私の行動も、「コントラスト効果」や、その前の行動の「アンカリング」が与えている影響なのかもしれません。

マーケティングリサーチとコントラスト効果の関係

このように、私たちが何かを判断する際、“何かを基準に相対的に評価してしまう”のは避けられない傾向。

だからこそ、リサーチを行う際も、「コントラスト効果」、「アンカリング」は、考慮しておきたいポイントの1つです。

特に、マーケティングリサーチを行う際、

質問項目の順番や選択肢の順番を考える際に、「コントラスト効果」、「アンカリング」について、その影響について、ちょっと頭に入れておく方が良いと思います。

 

例えば、以下のような5段階評価の質問で、コントラスト効果がどのように影響をするか、説明します。

事例:質問の順番による回答への影響

Q.今回のサッカーワールドカップ ブラジル大会2014の出場国について、あなたは、それぞれの出場国について、どの程度、応援していますか。各国についてお答えください。

【出場国:エリア順に並べた場合】

対象国 5.非常に
応援している
4.応援
している
3.どちらとも
言えない
2.あまり
応援していない
1.まったく
応援していない
1.日本 5 4 3 2 1
2.オーストラリア 5 4 3 2 1
3.韓国 5 4 3 2 1
4.イラン 5 4 3 2 1
5.イタリア 5 4 3 2 1
6.イングランド 5 4 3 2 1
6.イングランド 5 4 3 2 1
7.スペイン 5 4 3 2 1
8.ドイツ 5 4 3 2 1
—18.ブラジル 5 4 3 2 1

この場合、もし自分が回答するなら、

「日本を“5”としたなら、同じアジア枠のオーストラリアにも応援したい」

「日本は“5”で確定だけど、ヨーロッパの中ならドイツよりもスペインを、日本と同じように応援したい!」

「日本を“5”としたなら、ブラジルは、1つ下げて“4”かな?」 といったように、

最初に「日本」について回答したなら、以降の質問に対する回答は、初めに回答した「日本についての回答」を自分なりの基準点とし、その他の国の評価は、「日本が5なら○○は○○」と、相対比較をしながら評価しませんか? (コントラスト効果)

また、最初に回答した「日本」についての回答結果が、以降の質問に対する自分の回答の基準=錨(アンカー)となって、自然と考えてしまうのではないでしょうか?(アンカリング)

では、もし、この質問の順番が、上記のような、出場国のエリア順ではなく、アイウエオ順に並べられた場合、調査結果はどのように変化するのでしょうか?

【出場国:アイウエオ順に並べた場合】

対象国 5.非常に
応援している
4.応援
している
3.どちらとも
言えない
2.あまり
応援していない
1.まったく
応援していない
1.アルジェリア 5 4 3 2 1
2.アルゼンチン 5 4 3 2 1
3.アメリカ 5 4 3 2 1



 

アイウエオ順では1番最初となる「アルジェリア」の回答は、日本が1番最初に並べられた場合のリサーチ結果と、同じなのでしょうか?

結局、何が言いたいかと言えば、質問文に対する回答は、その質問に先だって、どのような質問がなされたかによってさまざまな影響を受けるということ。調査用語では、「キャリーオーバー効果」とも言います。

これらの質問項目の順序効果の低減を目指す手法として、質問項目の順序の入れ替え(ランダマイゼーション)など、方法論があるのですが、論理的には順序効果は、低減は出来ても全くの0とすることは、難しいと思います。

たとえば、KFSのリサーチ比較テストでは、質問項目の順序効果の低減のために、商品やサービスに関する総合評価を、1番最初に質問した場合と、1番最後に質問した場合、2パターンにおける統計上の違いが見られ、単純に合算して、集計・分析することは難しいという結果が出ています。

つまり、質問紙を作る際は、事前の調査設計の段階で、質問項目のフローづくり、与件を与えずにどのような順番で質問をしていくか、質問や選択肢の順序効果の排除のためのリサーチ上の工夫など、”思った以上に”、検討することが多いのです。

ちなみに、なぜ、「コントラスト効果」と「アンカリング」について、一言書きたくなったかと言えば・・・。

せっかく楽しみにしていたサッカーW杯2014。あっけなく、ポルトガルが一次リーグで敗退してしまったからです・・・。

あ~、とても残念。日本が負けたのも残念だけれど、あのクリスチアーノ・ロナウドの活躍が見られなくなってしまうなんて・・・。

あ~、心から残念!
だからこそ・・・。

あなたの“心の中のアイドル”を見た後、自分の隣のパートナーを見るのはあまりお勧めできません。

私の場合は、どうしても、クリスチアーノ・ロナウドにアンカリングされた後では、“コントラスト効果”が効きすぎてしまうようです・・。

まとめ:リサーチにおけるコントラスト効果とは?

  • 調査の回答時において、被験者は、評価項目のそれぞれを個別に絶対評価するのではなく、その直前の項目との相対比較で評価をする傾向を示すこと。
  • つまり、質問文に対する回答は、その質問に先だって、どのような質問がなされたか、質問項目の順番、選択肢の順番など、様々な影響を受けること。
  • 回答者の自分自身の回答に一貫性を持ちたいと思う心理も影響
  • 質問項目の順序効果の低減を目指す手法として、質問項目の順序の入れ替え(ランダマイゼーション)など様々な手法があるが、そのメリットとデメリットを考えた上で取り入れることの検討が必要

これらのちょっとしたコツを考えることで、より、有意義なマーケティングリサーチを実施することができると思います。

関連情報

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